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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)124号 判決

1 請求の原因1及び2の事実は、当事者間に争いがない。

2 そこで、原告の主張する審決の取消事由について検討する。

(一) 本件意匠の構成

成立に争いのない甲第一号証の二によれば、本件意匠の構成は、天井吊下灯用グローブとして、周胴面の形状が正面、背面、左右両側面の各面において方形状に現われる直方体筒状であること、上面及び下面の形状がそれぞれ上・下方向に突出する偏平四角錐台形状であつて、上面側、下面側において一本の線条体が四角形を形成するよう中央円形縁枠の接点から周側面へ渦巻状にほぼ直角状に折曲・旋回した連続を示していること、周胴面の幅対高さの比はほぼ一対一・五であり、上面及び下面の突出部の高さ対周胴面の高さの比はほぼ一対二〇であること、線条体は、周胴面では、三側面(正面及び左右両側面)において二本宛等間隔並行状で一対となつたもの八対(計一六本)が横方向左方より右方へ各対の間の幅と一対をなす二本の幅の比が上下に一〇対三となるよう規則状に斜行して現われ、一側面(背面)においてのみ線条体一六本が横方向に等間隔規則状でジグザグ状に斜行し左と右とで段違状となり、その左右端面では上下に二本宛ほぼ一〇対三の比となるように現われていることが認められる。

したがつて、本件意匠は、周胴面のうち三側面において線条体の現われ方が規則的であり、残りの一側面においても線条体のジグザグ状の現われ方に規則性があるものということができるが、本件意匠に係る物品は天井吊下灯用グローブであるから、その一般的な使用態様からすると、看者が天井に吊下げた物品をその正面又は正面側の斜め下方に立つて観察した場合を除いて、背面のジグザグ状に構成された線条体が看者の目に入り易いことから、物品全体としては周胴面の線条体の並行状態が一部変化しているものとして観察されることが明らかであつて、本件意匠をもつて全体の態様として均整のとれた規則的な線条体が組合わされた意匠とすることはできない。

(二) 引用意匠の構成

成立に争いのない甲第一号証の三によれば、引用意匠の構成は、照明用グローブとして、周胴面の形状及び上面・下面の形状と線条体の構成、上面・下面の突出部の高さ対周胴面の高さの比において本件意匠とほぼ同一であり、周胴面の幅対高さの比はほぼ一対一であること、線条体は、周胴面では、正面に線条体六本、背面及び左右両側面に線条体七本が横方向に不等間隔不規則状でジグザグ状に斜行して現われていることが認められる。そして、引用意匠に係る物品は照明用グローブであつて、天井に吊下げて使用するのがその一般的使用態様であることは本件意匠と異ならないから、看者には周胴面の各側面に不規則かつジグザグ状に現われる線条体が強く印象に残るものとして観察され、そこに引用意匠の特徴が存するということができる。

(三) 本件意匠の要部の構成と引用意匠との対比

審決認定のように、本件意匠、引用意匠の属する分野において、本件意匠の出願前、周胴面の基本形状を直方体筒状又は立方体筒状とし、その上面及び下面の基本形状を、それぞれ偏平角錐台形状とする面が突出するよう形成したものは普遍化しており、全体の形状又は周胴のみの幅対高さの構成比を各種の比率に変更したものにすることが既に常識化していたことは当事者間に争いがない。

そして前掲甲第一号証の三、成立に争いのない甲第二号証ないし第五号証、乙第一号証、第二号証、第三号証の一、二によれば、第一参考意匠及び第二参考意匠には、周胴面の各側面(全面)又は一部分に線条体複数本が横方向に等間隔並行状に現われていること、第三参考意匠及び第四参考意匠には、側面の一部に線条体が二本宛横方向にほぼ並行状で一対となり斜行して規則状に現われていること、引用意匠及び第五参考意匠、第六参考意匠には、周胴面の各側面に線条体が複数本横方向に規則状又は不規則状でジグザグ状に斜行して現われていること、第七参考意匠には、線条体が二本宛横方向にほぼ並行状で一対となり、ほぼ等間隔で規則状に現われていることがそれぞれ認められ、このように線条体の構成に関する諸点が複数の国内外雑誌・公報等に現われていることからみると、これらの構成は本件意匠の出願前既に普遍化していたものと認めるに妨げなく、この点に関する審決の認定には誤りがない。

以上の認定事実によれば、原告が本件意匠の要部又は特徴であると主張する前記(一)認定の本件意匠の周胴面の線条体の構成は、周胴面の三側面において、線条体が二本宛等間隔並行状で一対となつて規則状に斜行して現われる構成においても、また他の一側面において、線条体が横方向に等間隔規則状でジグザグ状に斜行して現われる構成においても、この種の意匠において普遍化した構成に基づいて、これらを組合わせ、改変したものに他ならない。

原告は、一本で広狭交互に捲回した場合に生ずる左、右交互の斜行部分を全体の<省略>の部分として周胴面の一部分に集中して現わしたものは本件意匠が初めてであると主張するが、そうであつても、それは周胴面の三側面に線条体を二本宛等間隔並行状で一対として規則状に斜行させる普遍化した構成と、引用意匠の出願後に普遍化した線条体がジグザグ状に斜行して現われることを特徴とする引用意匠の要部とを組合わせて改変することによつて構成されたものにすぎない。

そして、このように構成された本件意匠を引用意匠と対比すると、周胴面の線条体の構成において、前記認定のとおり、本件意匠の線条体が比較的規則状に現われ、各側面一六本(うち三側面では、二本宛八対計一六本)であるのに対し、引用意匠の線条体が本件意匠に比較して不規則であり各側面六本又は七本で構成されている点に差異はあるが、その他の基本的構成態様は共通であり(周胴の幅対高さの構成比を各種の比率に変更したものにすることは常識化しているから、その差異は格別の差異とはいえない)、両意匠を全体的に観察しても、本件意匠は、看者にとつて、周胴面における三側面の線条体の並行状態が一側面においてジグザグ状により一部変化しているものとして観察されるものであつて、周胴面全体に線条体がジグザグ状に現われることを特徴とする引用意匠から生ずる印象と共通するところがあり、線条体の並行状態を示す三側面との結合によつて、殊更引用意匠の印象を越えて別異感を看者に与えるほどのものではなく、普遍化された線条体の並行態様の面との単なる組合せの域を出たものとはいい難い。

したがつて、本件意匠は、普遍化された意匠の水準を前提とし、全体として引用意匠に類似するものと認めた審決の判断に誤りがあるとはいえない。

3 よつて、審決の取消を求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却することとする。

〔編註〕 本件に関する意匠は左のとおりである。

(一)

<省略>

<省略>

(二)

<省略>

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